
住宅ローンの抵当権ってなんのこと?
抵当権が残っている家は売却できないってホント?
住宅ローンを使う場合、抵当権を設定することがほとんどですが、意外にも抵当権についてしっかり理解できている人は少ないようです。
そこで、この記事では、住宅ローンの抵当権についてくわしく解説をします。
さらに、
・抵当権を抹消する方法
・抵当権の行使を避けて住宅ローンを完済するための4つの対応方法
をご紹介します。この記事を読めば、住宅ローンが残っている家でもスムーズに売却することが可能になります。適切な抵当権の抹消方法を把握いただき、安心して売却や住み替えを進めてください。
目次
1. 抵当権とは
抵当権とは、「債務の担保に供した物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」です。
よくあるのが住宅ローンでお金を借りた際に設定するケース。お金を借りた人(債務者)が返済できなくなってしまった(債務不履行)といった場合に備えて、土地や建物を担保とする権利のことです。
万が一、お金の返済できなくなった場合、担保にした土地や建物は、債権者(お金を貸した金融機関等)が競売などにかけて売却し、債権の回収に充てます。
ここで住宅ローンを利用する際の「抵当権」との関わりをご紹介します。
・住宅ローン借り入れ時(新規購入)/抵当権の設定を行います
無担保の住宅ローンもありますが、通常は抵当権を設定します。
・住宅ローン借り換え時(住み替えなど)/抵当権抹消と抵当権設定を行います
より金利の有利な住宅ローンへの借り換えや住み替えで不動産売却・購入をする場合には、どちらも抵当権の抹消と設定が必要です。
住み替えの場合は、今まで住んでいた家の住宅ローンをいったん完済して抵当権を抹消し、新しく購入する家の住宅ローンを借りる際に再度抵当権を設定します。
・住宅ローン完済後(売却・相続時など)/抵当権抹消を行います
住宅ローンを完済しても自動的に抵当権が抹消されるわけではありません。金融機関は抵当権抹消の手続きをしてくれませんので、自分で行う必要があります。
また、債務者が完済前に亡くなり、団信(団体信用生命保険)の保険金で完済となるケースでは、相続人が相続登記後に抵当権抹消を行うことになります。
◉抵当権の行使とは?
ある不動産に抵当権が設定されているとき、債権が弁済されない場合には、最終的に債権者(お金を貸した人や金融機関等)はその抵当権にもとづいて担保である不動産を売却し(競売にかけ)、その代金を自己の債権の弁済に充てることができるというものです。「抵当権の実行」とも言います。
2. 住宅ローンが残っている状態で売却するには抵当権を抹消する必要がある
人事異動で引っ越しを余儀なくされたとか、子供が生まれて手狭になったから広い家に住み替えたいなど、さまざまな理由で住宅ローンが残っている状態でも家の売却をしなくてはいけなくなるケースがあります。
住宅ローンが残っている状態の家を売却するためにしなくてはいけないことは「抵当権の抹消」です。抵当権を抹消するためには、いったん住宅ローンを完済させる必要があります。
一般的に抵当権の抹消が必要になるケースは以下の3つです。
・銀行への住宅ローンを完済した時
・マンションなどの不動産を売却する時
・住宅ローンの借り換えを行う時
3. 抵当権を抹消する方法
抵当権を抹消する方法をご紹介します。通常は司法書士に依頼して手続きをしてもらいますが、自分自身で行うことも可能です。
ここでは、
・抵当権を自分自身で抹消する場合の4つのステップ
・抵当権抹消にかかる費用
をご紹介します。
3-1. 抵当権を抹消する4つのステップ(自分自身で手続きを行う場合)
自分自身で抵当権抹消の手続きをする場合の4つのステップをご紹介します。この4ステップに入る前に、管轄の法務局へ手続きの詳細を確認してください。管轄の法務局によって取り扱いが異なることもあるので、必ず事前に相談しておくようにしてください。
【抵当権を抹消する4つのステップ】
①金融機関から手続きに必要な書類を受け取る
②提出する書類の準備をする
③抵当権抹消登録申請書類を作成する
④法務局へ書類を提出する
自分で手続きを行う場合は書類の手配や作成に手間と時間がかかります。法務局は平日の8:30〜17:15しか業務を行なっていません(土日祝は休み)。場合によっては複数回足を運ばないといけないこともありますので、平日に休みが取りづらい方や多忙な方にとってはかなりの負担となります。
ある程度時間的な余裕がある場合以外は、司法書士に手続きを依頼するのが無難です。
金融機関から手続きに必要な書類を受け取る
金融機関から抵当権の抹消登記に必要な以下の4つの書類を受け取ります。一般的にローンを完済すると金融機関から送られてきます。
・弁済証書
住宅ローンが完済されたことを証明する書類
・登記済証または登記識別情報
抵当権を設定した際に法務局から発行される書類
・登記事項証明書
住宅ローンを組んだ会社の登記事項証明書
*抵当権抹消登記には発行から3ヶ月以内の登記事項証明書が必要。期限を過ぎていた場合、法務局で1,000円払えば自分で取得可能。
・委任状
住宅ローンを組んだ金融機関が、抵当権抹消に関する登記を委任するための書類
提出する書類の準備をする
抵当権抹消手続きに必要な書類は、
①金融機関から送られてくる全ての書類(「金融機関から手続きに必要な書類を受け取る」項参照)
②抵当権を抹消する不動産の全部事項証明書
③自分で用意する登記申請書
の3つです。
②は、法務局まで出向いて取得するかインターネットからでも取得可能です。
「抵当権を抹消する不動産の全部事項証明書」を取得しないまま申請書を作成すると、高い確率でミスをしてしまいます。作成ミスをしたまま法務局に提出してしまった場合、修正に手間がかかりますので、抵当権を抹消する不動産の全部事項証明書を必ず取得するようにしてください。
インターネットで取得する場合、下記サイトから取得できます。
登記情報提供サービス
③の登記申請書は、法務局のホームページから用紙のフォーマットをダウンロードして作成します。
用紙のフォーマットは(一太郎 Word PDF)の中から選ぶことができます。抵当権の抹消の登録申請書は 法務局 不動産登記の申請書等の様式について の《16)抵当権抹消登記申請書》からダウンロードしてください。
*申請書用紙のサイズはA4、紙質は上質紙等の長期間保存できる丈夫なものを使用すること
*文字記入に鉛筆は不可。直接パソコン(ワープロ)を使用して入力、もしくは黒色インク、黒色ボールペン等で記入すること
抵当権抹消登録申請書を作成する
抵当権抹消登記申請書を作成します。法務省のサイトから取得できる記載例をよく見ながら作成してください。記載例には注意事項もくわしく掲載されていますので、見逃さず慎重に作成してください。
法務局へ書類を提出する
抵当権抹消登記申請書の記入後、提出書類一式をそろえて法務局へ書類を提出します。
ローン完済後に金融機関から送られてきた書類や、抵当権抹消登記のために受け取った書類のなかには申請後に返却しなければならない必要書類もありますので注意してください。
3-2. 抵当権抹消手続きにかかる費用
抵当権抹消費用の相場は、手続きを自分で行う場合は3,000〜5,000円程度、司法書士に依頼する場合は10,000円〜15,000円程度です。
抵当権抹消登記に必要な費用の内訳は以下の4つです。
・登録免許税
土地・建物それぞれ1件につき1,000円
*自分で手続きを進める場合も司法書士に依頼する場合も必要
・事前調査費用
1不動産につき335円(全部事項証明書の郵送請求は600円(オンライン請求500円)、登記事項要約書は450円かかる)
事前調査費用は、抵当権抹消登記の申請をするにあたって、土地や建物の所在や面積といった登記内容がどうなっているか調べるための費用。
*自分で手続きを進める場合も司法書士に依頼する場合も必要
・事後謄本の取得費用(登記事項証明書)
登記簿謄本は1筆600円(オンライン請求の場合は500円
*最寄の登記所や法務局証明サービスセンター受け取りは480円)
抵当権抹消登記の申請完了後に登記簿謄本を取得し、確かに抵当権が抹消されているかを確認するための費用。
*自分で手続きを進める場合も司法書士に依頼する場合も必要
・司法書士への報酬
一般的には、5,000〜10,000円程度(金額は依頼する司法書士によって異なる)
*自分で登記手続きする場合にはかからない
4. 抵当権の行使を避けて住宅ローンを完済するための4つの対応方法
住宅ローンが残っている不動産物件を売却して住み替え(買い替え)を行う場合、いったん住宅ローンを完済してから、新しい家の住宅ローンを借ります。
通常は今まで住んでいた家を売却して得たお金を住宅ローンの返済に当てることで完済させますが、家の売却価格が住宅ローンの返済額を下回ってしまう場合や、新しく住む家を建築する場合などに住宅ローンを完済する方法は2つあります。
・住み替えローン(買い替えローン)
・つなぎ融資(つなぎローン)
住宅ローンを順調に返し続けてきた方であれば、住み替えローンかつなぎ融資がおすすめです。
これ以外にも住宅ローンの完済をする方法は2つありますが、事情がある方向けです。
・不動産買取
・任意売却
不動産買取は、急いで売却しなければいけない事情がある人向け、任意売却は、住宅ローンの返済が難しくなった人が競売を避けるために行う最終的な手段となります。
4-1. 住み替えローン(買い替えローン)
住み替えローンは、今住んでいる家を売却しても住宅ローンが完済できない場合に、住宅ローンの残債と新居の購入資金をまとめて融資をしてもらえる金融商品です。ローンの不足分を現金等で補う必要がなく、担保割れしていても(現在の家を売却しても住宅ローンが残ってしまう状態)新しく住み替えることが可能です。
◉住み替えローンの方法
「売却」と「購入」の決済日をそろえる必要があるので、売却と購入を同時進行で進めます。
ただし、一般的な流れとしては、下記の図のように売り先行になることが多いでしょう。
理想である同時進行の流れをまとめると、
(1)不動産一括査定サイトで査定を行い仲介してもらう不動産会社を選ぶ
(2)不動産会社へ住み替えローン利用を告知する
(3)売却活動を始める
(4)購入のための資金計画を立てる
(5)新居探し・物件見学を始める
(6)購入者と売買契約
(7)新居の申し込みを行う
(8)新居の売買契約締結
(9)現在の住まいの引き渡し・売却&新居の購入の決済
となります。
一括査定サイトを利用するなら、「HOME4U」がお勧め!
HOME4Uは、下記の様な特徴があります。
☑️運営母体がしっかりしている
⇒NTTデータグループのNTTデータ・スマートソーシングが運営!
☑️利用者のことを考えたサイト運営をしている
⇒サイトに登録しているのは、厳しい審査をクリアした信頼できる不動産会社だけ!
⇒利用者がなにか困ったときに相談できる「何でも相談窓口」を設置!
☑️不動産の査定実績が豊富にある
⇒売却査定数 累積45万件(2021年6月時点)
全国対応のため、ほとんどの物件で対応が可能です。
信頼性の高いHOME4Uをぜひご利用ください。
◉住み替えローンを選択したほうがいいケース
現在住んでいる住宅を売却したくても、ローンが売却価格を上回っているオーバーローンの状態。
家を売って住宅ローンを完済できる人は利用できません。決済日をそろえるために、新居がゆっくり探せない可能性があります。また新居の購入費用以上にローンを借りることになるので、返済計画に注意が必要になります。金融機関の審査も厳しくなる傾向があります。
住み替えローンについてもっとくわしく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
住み替えローンをやさしく解説|残ローンの完済&新居への住み替えを叶える!
◉補足情報/「買い替え特約」とは
今の家を売って次の家の資金にしたいが、先に新居を購入したい場合に「◯月◯日までに自宅を◯◯万円以上で売却できなかった場合には、契約を解約できる」といった特約をつけて売買契約をします(同時に手付金も払う)。実際に、期日までに家が売れなかった場合は契約が白紙になり、手付金も戻ってきます。
特約をつけるのには、購入予定の新居の売主の同意が必要です。
買い替え特約は、家を買う方(買主)にはメリットがありますが、売る方(売主)にはメリットがないので、買い替え特約をOKしてくれる売主はあまり多くないのが現状です。
4-2. つなぎ融資(つなぎローン)
つなぎ融資は、今住んでいる家を売却する前に新居を購入したい場合に、一時的に(つなぎの間)利用できるローンです。(立替払いのイメージ)
つなぎ融資は、売却費用や購入資金にあてることができ、新居を先に購入し、仮住まいなしで安心して家を売却することができる方法です。
◉つなぎ融資の方法
不動産会社を通じて金融機関を紹介してもらう場合と、直接金融機関にローンを依頼する方法があります。金利が高く取り扱う金融機関が少ないのがデメリットです。つなぎ融資を借りている間は金利を支払い、1年〜半年程度の短期間に返済します。
◉つなぎ融資を選択したほうがいいケース
現在住んでいる家の売却費用と新しい家の購入資金を同時に工面できない場合。新しい家を土地を購入して注文住宅などで建てる場合。
売りやすい不動産を所有している売主にはメリットがありますが、売りにくい不動産を所有している売主にはリスクが発生する場合があります。
4-3. 不動産買取
不動産会社が不動産を買い取ってもらう売却方法です。通常の不動産売却の場合は、不動産会社が売主と買主の間を取り持って仲介業務を行いますが、不動産買取の場合は、不動産業者が直接の買主となります。
買取の場合は市場価格の70%〜80%程度になってしまうので、売却価格は通常の仲介で売却する場合よりも低くなります。
◉不動産買取の方法
不動産会社に買い取り金額を提示してもらい、売買契約を結びます。不動産一括査定サイトを利用して買い取り金額の査定を依頼すると、不動産会社探しの手間が省けます。
◉不動産買取を選択したほうがいいケース
一刻も早く不動産を売却して、現金化したい事情がある場合。
4-4. 任意売却
任意売却は、どうしてもローンが払えなくなった場合、競売にかけられる前に不動産を売却することができる方法です。
金融機関と債務者との調整は任意売却専門のコンサルタントが行います。不動産の売却価格がローンの残額を下回っても売却は可能です。任意売却により発生する書類の手続き費用や、任意売却専門コンサルタントへの相談料等の経費は、売却価格から支払われるので余計な出費がかかりません。
金融機関の同意を得れば、ローンが残っていても抵当権をはずすことができます。
◉任意売却の方法
ローンを滞納して5ヶ月が過ぎると、金融機関から書面が届き、任意売却の手続きが可能になります。
同時に、分割支払いは不可能となり、一括でローンを支払うことになります。
金融機関からの通知や督促を無視していると、返済の意思がないと判断され競売にかけられてしまうので注意してください。
競売で落札されてしまうと、任意売却の手続きをすることができなくなります。
◉任意売却を選択したほうがいいケース
ローンの返済ができないと判断した場合。
任意売却は、競売を回避する最終手段です。競売よりも融通がきくので、高く売却できる可能性があります。
まとめ
いかがでしたか。
住宅ローンの抵当権とは、お金を借りた人(債務者)が返済できなくなってしまった(債務不履行)といった場合に備えて、土地や建物を担保とする権利のことです。
万が一、お金の返済できなくなった場合、担保にした土地や建物は、債権者(お金を貸した金融機関等)が競売などにかけて売却し、債務の回収に充てます。
ここで住宅ローンを利用する際の「抵当権」との関わりを復習しておきましょう。
・住宅ローン借り入れ時(新規購入)/抵当権の設定を行います
・住宅ローン借り換え時(住み替えなど)/抵当権抹消と抵当権設定を行います
・住宅ローン完済後(売却・相続時など)/抵当権抹消を行います
また、抵当権の行使を避けて住宅ローンを完済する方法には以下の4つがあります。
・住み替えローン(買い替えローン)
・つなぎ融資(つなぎローン)
・不動産買取
・任意売却
家の住み替えを行う場合には、ぜひHOME4Uの一括査定サイトを利用して、早く高く売ることができる不動産会社を見つけてください。