マイホームの買い替えの時に利用できる税金の特例について全解説

買い替え 特例

マイホームを買い替え(買い換え)た時に、一定の要件を満たせば税金の特例が受けられます。

受けられる特例は、「特定のマイホームを買い換えたときの特例」という特例です。

この特例を受けると、買い替えた際に支払うべき税金を、一旦、払わなくてよくなります。
※正しくは、買い換えたマイホームを将来売却する時まで、税金を繰り延べることができる。詳しくは本文で解説。

しかし、この特例、少し仕組みが複雑なため、「特例の概要や適用要件を読んだけれど、よく意味がわからなくて困っている」という方が多くいらっしゃいます。

そこで、この記事では、【特定のマイホームを買い換えたときの特例(特定の居住用財産の買換えの特例)】を一般の方にもわかりやすいよう、かみ砕いて解説してまいります。

「この特例がどういった内容なのか、詳しく知りたい」
「我が家の場合も、この特例が受けられるのか知りたい」

など、【特定のマイホームを買い換えたときの特例】について調べている方は、ぜひ参考にしてください。

※以下、国税庁HPの表記とあわせて、「かいかえ」の表記は「買い換え」にて統一しております。

1. 5分でわかる|特定のマイホームを買い換えたときの特例を徹底解説!

この章では、マイホームを買い換えたときに受けられる可能性のある特例【特定のマイホームを買い換えたときの特例(以下、買い換えの特例)】を徹底解説してまいります。

 

1-1.そもそも不動産の売却後に税金がかかるのは、“利益が出た場合”のみ

はじめに大前提として押さえておいていただきたいのは、「そもそも不動産の売却後に税金がかかるのは、不動産を売却して“利益が出た場合”のみ」ということです。仮に“損失が出た場合”には、税金はかかりません。つまり、“損失が出た場合”には、そもそも税金がかからないため、【買い換えの特例】を受ける必要がないということです。
※損失が出た場合、【マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例】が受けられる可能性があります。詳しくは3章を参照ください。

“利益が出た”かどうかは、下記の計算式によって算出します。「譲渡所得金額」がプラスとなる場合は“利益が出た(譲渡益がある)”、マイナスとなる場合は“損失が出た”ということになります。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)= 譲渡所得金額

譲渡価額 不動産の売却額のこと。
取得費 過去に、不動産(今回売却した不動産のこと)を取得する際に支払った費用。
譲渡費用 不動産の売却にかかった費用。

詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
[参考]【徹底解説!】不動産を売却した時に、税金はいくらかかる?

1-2.【買い換えの特例】「売却額」と「買い換えたマイホームの金額」によって内容が異なる

【買い換えの特例】の内容は、売却額が買い換えたマイホームの金額より少ない(売却額≦買い換えたマイホームの金額)か、売却額が買い換えたマイホームの金額より大きい(売却額>買い換えたマイホームの金額)かで異なります。

売却額が買い換えたマイホームの金額より少ない(売却額≦買い換えたマイホームの金額)場合
所有していたマイホームの売却額よりも高い金額で、新たにマイホームを取得した場合、所有していたマイホームを売却して、どれだけ譲渡益が出ていても(どれだけ譲渡所得金額がプラスとなっていても)、その時点で税金はかかりません。

ただし、この特例は、支払うべき税金を払わなくてよくなるものではなく、今回買い換えたマイホームを将来売却する時まで、支払うべき税金を繰り延べることができるというものです。具体的には、将来、買い換えたマイホームを売却する時に、所有していたマイホームの譲渡益と、買い換えたマイホームの譲渡益を合算した額に対して、課税されることになります。

具体的な数字で見ていきましょう。
下記のようなマイホームの買い換えを行なったとしましょう。

【例】
▼1,000万円で購入したマイホームAを5,000万円で売却

▼新たに7,000万円のマイホームBを購入
⇒譲渡益(譲渡所得金額)への課税なし(将来マイホームBを売却する時に繰り延べ)。
「買い換えたマイホームが7,000万円より売却額5,000万円が少ない(売却額5,000万円≦買い換えたマイホームの金額7,000万円)」ため、マイホームAの売却時には課税されません。

▼将来、8,000万円でマイホームBを売却
⇒マイホームAとマイホームBの譲渡益の合算分に対して課税。
将来マイホームBを売却した時、はじめて税金が発生します。
マイホームAを売却したときに繰り延べられていたマイホームAの譲渡益(譲渡所得金額)4000万円と、マイホームBの譲渡益(譲渡所得金額)1,000万円のあわせて5000万円の譲渡益に対して、課税されます。

※マイホームAの譲渡益(譲渡所得金額)4,000万円:マイホームA売却額5,000万円-マイホームA購入額1,000万円
※マイホームBの譲渡益(譲渡所得金額)1,000万円:B売却額8,000万円-マイホームB購入額7,000万円
※便宜上(説明が複雑にならないよう)、上記の譲渡益には譲渡費用等は加味していません。実際は、1-1でご紹介した計算式にて、譲渡費用を加味して譲渡益(譲渡所得金額)を算出します。 
[参考]国税庁HP「特定のマイホームを買い換えたときの特例」

売却額が買い換えたマイホームの金額より大きい(売却額>買い換えたマイホームの金額)場合
所有していたマイホームの売却額よりも、新たに取得したマイホームの金額が少ない場合は、所有していたマイホームを売却した時点で、下記計算式にて算出した譲渡所得金額に対して課税されることになります。

▼収入金額の計算
所有していたマイホームの売却額-新たに取得したマイホームの金額=収入金額[A]

▼必要経費の計算
(所有していたマイホームの取得費+譲渡費用)×(収入金額[A]÷所有していたマイホームの売却額)=必要経費[B]

▼譲渡所得金額の計算
収入金額[A]-必要経費[B]=譲渡所得金額

具体的な数字で見ていきましょう。
下記のようなマイホームの買い換えを行なったとしましょう。

【例】
所有していたマイホームの売却額が1億円、所有していたマイホームの取得費が1,000万円、譲渡費用(売却にかかった費用)が500万円、新たに取得したマイホームの金額が7,000万円の場合

▼収入金額の計算
所有していたマイホームの売却額1億円-新たに取得したマイホームの金額7,000万円=収入金額3,000万円

▼必要経費の計算
(所有していたマイホームの取得費1,000万円+譲渡費用(売却にかかった費用)500万円)×(収入金額3,000万円÷所有していたマイホームの売却額1億円)=必要経費450万円

▼譲渡所得金額の計算
収入金額3,000万円-必要経費450万円=2,550万円
⇒譲渡所得金額2,550万円に対して、課税されることになります。

※「住民税」「所得税」「復興特別所得税」がいくらかかるのかは、下記[参考]内の計算式にて算出できます。
[参考]国税庁HP「売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき」

[参考]不動産売却後にかかる税金の算出方法
「住民税」「所得税」「復興特別所得税」はそれぞれ、下記の計算式で求めることができます。[売却額<買い換えたマイホームの金額]となる場合も、[売却額>買い換えたマイホームの金額]となる場合も、実際に納める税金は、下記計算式にて算出します。

譲渡所得金額×税率=住民税、所得税・復興所得税

〈税率〉

住民税

所得税・復興特別所得税
(復興特別所得税は2037年まで)

長期譲渡所得 5%

15.315%

※[参考]国税庁HP「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」

1-3.必見!【買い換えの特例】を受けるための適用要件まとめ

適用要件をすべて満たす場合に、【買い換えの特例】を受けることができます。
<特例の適用要件>※一部抜粋
・マイホームの売却額が1億円以下
・売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超える
・買い換える建物の床面積が50㎡以上、買い換える土地の面積が500㎡以下
・マイホームを売った年の前年から翌年までの3年間の間にマイホームを買い換えること

[参考]国税庁HP「特定のマイホームを買い換えたときの特例」

2. 知っておきたい!【買い換えの特例】以外の控除&特例

【買い換えの特例】以外にも、マイホームの売却時やマイホームの購入時に受けられる控除や特例があります。
そして、【買い換えの特例】と併用できるもの、できないものがありますので、その辺りの情報も、ぜひ押さえておきましょう。

2-1.住宅ローン控除|【買い換えの特例】と併用可!

【買い換えの特例】を受けていても、新たに購入したマイホームについて住宅ローン控除を受けられます。

ちなみに、住宅ローン減税とは、「住宅ローンを借り入れて住宅の新築・取得又は増改築等をした場合、年末のローン残高の1%を所得税(一部、翌年の住民税)から10年間控除する制度」のことです。

[参考]国土交通省HP「住宅ローン減税」
[参考]国税庁HP「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」

2-2.特別控除3,000万円の特例&軽減税率の特例|【買い替え特例】とは併用不可!

【買い換えの特例】は、特別控除3,000万円の特例&軽減税率の特例とは併用できないため、どちらを受けるか選ぶ必要があります(※特別控除3000万円の特例と軽減税率の特例は併用可)。

譲渡所得金額が3,000万円以下の場合は、3,000万円の特別控除の特例&軽減税率の特例を受けた方がお得です。ただし、譲渡所得金額が3,000万円を超える場合は、どちらがよりメリットがあるかは場合によって異なるので、それぞれいつ・どのぐらい税金が発生するのかを算出して、比較してみるのがオススメです。

■マイホームを売却|3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却した場合、最高3,000万円の控除が受けられます。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)-3,000万円= 課税譲渡所得金額

※譲渡所得が3,000万円に満たない場合は、特別控除額は、譲渡所得の金額が上限となる。
適用要件等について詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。
[参考]国税庁HP「マイホームを売ったときの特例」

■所有期間10年超のマイホームを売却|軽減税率の特例
マイホームを売却した年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合に受けられる特例です。

課税譲渡所得金額 住民税

所得税・復興特別所得税
(復興特別所得税は2037年まで)

6,000万円までの部分 4% 10.21%
6,000万円を超える部分 5%

15.315%

適用要件等について詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。
[参考]国税庁HP「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

3. [補足]マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたときの特例

契約マイホームの譲渡損失の金額について、その年の給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。さらに、損益通算を行なっても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。

<特例の適用要件>※一部抜粋
・マイホームの所有期間が売却した年の1月1日現在で5年を超える
・新たなマイホームの取得
・新たに取得したマイホームの住宅ローン(償還期間10年以上)

[参考]国税庁HP「損益通算」
[参考]国税庁HP「マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

4. まとめ

【特定のマイホームを買い換えたときの特例】について解説してまいりましたが、いかがでしょうか。

そもそも不動産の売却後に税金がかかるのは、“利益が出た場合”のみ。そして、【買い換えの特例】は、売却額が買い換えたマイホームの金額より少ない(売却額≦買い換えたマイホームの金額]場合と、売却額が買い換えたマイホームの金額より大きい(売却額>買い換えたマイホームの金額]場合とで内容が異なります。

また、【買い換えの特例】以外にも、マイホームの売却時やマイホームの購入時に受けられる控除や特例があります。ただし、【買い換えの特例】と併用できるもの、できないものがありますので、その辺りの情報も、ぜひ押さえておきましょう。

使える控除や特例はしっかり活用いただき、賢く買い換えを進めてください。

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