不動産相続に必要な手続き・流れと不動産相続にかかる費用・税金一覧

不動産 相続

不動産を相続するためには、『相続する人を決めて、相続登記(名義変更)をする』必要があります。

具体的には、以下の5つのステップを踏むことが基本となります。

①遺言書の確認
②法定相続人を確認
③遺産分割協議⇒相続人の確定
④相続登記(名義変更)
⑤相続完了

…とはいえ、これだけでは、「何がなんだかよくわからない」という方も少なくないでしょう。

そこで、この記事では、この不動産相続の流れについて、「いつ・何をする必要があるのか」を掴んでいただけるよう、詳しく解説してまいります。

また、あわせて、気になる不動産の相続にかかる費用&税金、不動産の相続に関する知識などもご紹介します。ぜひ、参考にしてください。

1. 不動産相続の手続き・流れ[全5ステップ]

不動産 相続ここでは、不動産相続の一連の流れをご紹介いたします。

大枠の流れとともに、不動産を相続するにあたり「いつ・何をする必要があるのか」を押さえていきましょう。

▼ステップ① 遺言書の確認

「不動産の相続」は、まず遺言書の有無を確認するところからはじめましょう。

遺言書が公正証書遺言の場合、公正役場に問い合わせをすれば有無を調べてもらえます。自筆証書遺言(自筆で書いた遺言書)の場合、弁護士や行政書士などに預けている、信頼できる知人に預けている、銀行の貸金庫や住まいの金庫の中に保管しているなどのケースが考えられます。

遺言書がある場合は、原則、遺言書で指定された人が相続することになります。ただし、遺言書がある場合も、不動産について記載がない場合は、法定相続人(民法で定められた、遺産を受け取る権利のある人)全員で遺産分割協議をする必要があります。

※遺言書があり、かつ遺言書で不動産の相続人が指定されている場合は、遺産分割協議等は必要ないため、次はステップ④となります。

[補足]遺言書が公正証書遺言でない場合は、別途、手続きが必要!
遺言書が公正役場で作られた公正証書遺言である場合は、遺言書をそのまま登記の申請書類として使用できます。ただし、自筆証書遺言の場合は、別途、家庭裁判所の検認が必要となります。

▼ステップ② 法定相続人を確認

遺言書がない場合もしくは遺言書で不動産の相続人が指定されていない場合は、はじめに、すべての法定相続人(民法で定められた、遺産を受け取る権利のある人)を明らかにする必要があります。

もしかすると、「そんなの調べなくてもわかる」と思われる方もいるかもしれませんが、万に一つの確率で、「誰も知らなかったけれど、隠し子がいた」など、思いがけない相続人の存在が発覚することもあります。後のトラブルを避けるためにも、必ず調べましょう。

法定相続人は、被相続人(亡くなった人)の出生時から死亡時までの戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)で確認することができます。

※戸籍謄本は被相続人の本籍地の役所に請求して取得します。結婚や転籍などで本籍を移している場合は、以前の本籍地へも戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を請求する必要があります。

▼ステップ③ 遺産分割協議⇒相続人の確定

法定相続人が明らかとなったら、法定相続人全員で、不動産を誰が相続するのかを協議し、決定します。相続人が決定したら、遺産分割協議書を作成しましょう。

※遺産分割協議書の記載方法等については詳しくは、法務局HP資料(PDF)をご確認ください。

[補足]不動産を複数の法定相続人で相続する方法は4つある
不動産を複数人で相続する場合、以下4つの方法があります。

●現物分割
現物、つまり「不動産」自体を分けて相続する方法。たとえば、土地・建物を相続人二人で分ける場合、一人が土地を、一人が建物を相続する。
不動産はそれぞれ価値が異なるため、平等に分けられないことが多く、公平に相続するのは難しいというデメリットもある。

●代償分割
特定の相続人(一人または数人)が不動産を相続し、(不動産の相続人が)不動産を相続しなかった相続人に相応の代償金を支払う方法。たとえば時価5,000万円の不動産に対し相続人が二人いる場合、一人が不動産を相続し、もう一人に代償金として2,500万円を支払うことになる。

●換価分割
不動産を売却して現金化し、相続人で分ける方法。厳密にいうと、不動産の売却額から売却費用(仲介手数料など)や税金を差し引いた残金を分けることになる。現金なので、平等に分割して相続することができる。
不動産を売却するためには、相続登記(名義変更)が必要となるため、一度、全員もしくは代表者が不動産を相続してから売却する流れとなる。

●共有分割
不動産の全部もしくは一部を、複数の相続人で共有して相続する方法。各相続人が法定相続分などの割合で相続することになる。
共有名義となるため、個人の意志だけでは不動産をどうすることもできない。今後、売却する場合も全員の同意が必要となる。

▼ステップ④ 相続登記(名義変更)

遺言書や遺産相続協議にて決定した相続人が不動産を相続するために、相続登記を行ないましょう。相続登記とは、不動産の名義を相続人に変更する手続きのことです。必要書類をそろえて法務局へ申請することで、相続登記をすることができます。

必要書類
・登記申請書
・被相続人(亡くなった人)の出生時から死亡時までの戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)
・被相続人の住民票の除票(もしくは戸籍の附票)
・固定資産評価証明書
・遺産分割協議書もしくは遺言書
・不動産の登記事項証明書
・(法定相続人全員分の)印鑑証明書
・(法定相続人全員分の)住民票 等
※場合によっては、相続人の戸籍謄本など、上記以外の書類が必要となることもあります

相続登記は、相続する不動産の管轄法務局にて申請をする必要があります。どの法務局でもできるわけではないので注意しましょう。相続する不動産がどこの管轄となるかは、法務局のHPで調べることができます。

相続登記の申請は、法務局の窓口に直接持ち込むか、郵送もしくはオンライン(インターネット)でも可能です。

▼ステップ⑤ 相続完了

相続登記が完了すると、法務局にて「登記識別情報」が発行されます。

この登記識別情報は、不動産を担保にローンを借りる時や、不動産を売却する時などに必要となりますので、大切に保管しておきましょう。

[補足]不動産相続の手続きは、司法書士に依頼するのがオススメ!
上記、不動産相続の流れをご紹介しましたが、一般の方が一連のステップをすべて自身で行なうのは、かなり大変です。特に、相続人が相当数いるなど、相続登記の内容が複雑な場合は、相当の時間と労力が必要となることは間違いありません。

そこでオススメなのは、この道のプロ、司法書士をうまく活用するやり方です。
司法書士へは、遺産分割協議書の作成から必要書類の収集、相続登記の申請まですべてを依頼することもできますし、少しでも司法書士費用を抑えたい場合は、必要書類の収集と遺産分割協議書の作成は自身で行なって、相続登記のみ依頼するということもできます。

※司法書士への報酬について詳しくは、2章を参照ください。

2. 不動産の相続にかかる費用&税金まとめ

不動産 相続不動産の相続にかかる「費用」「税金」について、解説してまいります。

2-1. 不動産登記にかかる費用

不動産登記には、[必要書類の取得費用]と[司法書士への報酬]がかかります。

●必要書類の取得費用

不動産の登記申請に必要な戸籍謄本、住民票などの書類は、市区町村の役所や法務局などで取得する必要があります。そして、これらの必要書類を取得するには、数百円/1通の発行手数料がかかります。
ちなみに、必要書類が総額いくらかかるかは、必要書類の種類、相続人の数、市区町村等によっても異なります。

※遠方の市区町村の区役所などに必要書類を請求する場合、郵送費や交通費なども別途必要となります。
※必要書類について詳しくは、1章を参照ください。

●司法書士への報酬

司法書士に不動産相続の手続きを依頼した場合には、司法書士への報酬がかかります。
※もちろん、自身で行なった場合、こちらの費用は発生しません。

・司法書士報酬の相場価格(相続登記申請のみ):4~10万円
※上記は、あくまで相場価格です。実際の価格が上記と大きく異なることもあります。

相場登記だけでなく、必要書類の収集、遺産分割協議書の作成等も依頼した場合は、さらに費用がかかります。

一つお伝えしておきたいのは、司法書士報酬は各司法書士が自由に設定できるということです。そのため、同じ依頼内容でも、司法書士によって、大きく価格差が生じることもあります。

2-2.不動産相続にかかる税金

不動産相続にかかる税金は全3つです。具体的には、相続時に「登録免許税」「相続税」、相続後に「固定資産税」がかかります。

登録免許税

不動産を相続登記する際、登録免許税がかかります。
登録免許税は、下記計算式にて自身でも算出することができます。

固定資産税評価額×税率0.4%=登録免許税

※固定資産税評価額の下3桁は切り捨て。
※算出した登録免許税の下2桁は切り捨て。
※算出した登録免許税が1,000未満の場合、登録免許税は1,000円となる。

固定資産税評価額は、「固定資産税の納税通知書に添付されている課税資産明細書」にて確認できます。もしくは、市区町村の役所にて取得できる「固定資産評価証明書」にて確認していただけます。

※登録免許税については詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。

●相続税

不動産を相続した場合、相続税がかかる可能性があります。

相続税がかかるかどうかは、下記計算式にて求めることができます。下記計算式にて、課税遺産総額がプラスとなった場合にのみ、相続税がかかります。

遺産総額-債務-非課税財産-葬式費用-基礎控除額=課税遺産総額

・遺産総額
文字通り、遺産の総額です。預貯金や不動産、株式など、相続した財産はすべて遺産総額に含まれます。

★不動産を相続する場合、遺産総額を算出するにあたり、不動産の評価額を明らかにする必要があります。不動産評価額の算出方法は、土地と建物で異なります。

 [土地]
土地の評価額は、「路線価方式」もしくは「倍率方式」にて算出します。
⇒路線価方式
路線価×補正率×土地面積=土地の評価額

⇒倍率方式
路線価が定められていない地域では、その土地の「固定資産税評価額」に倍率を掛けて、その土地の評価額を算出します。

※路線価方式や倍率方式について詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。
※また、要件を満たせば「小規模宅地等の特例」が受けられることもあります。詳しくは、国税庁HPを参照ください。
※固定資産税評価額について詳しくは、上記「登録免許税」を参照ください。

[建物]
建物の固定資産税評価額を、そのまま建物の評価額として使用します。

※固定資産税評価額について詳しくは、「登録免許税」を参照ください。

・債務
借金やローン残高など。

・非課税財産
墓所や仏壇などは非課税財産にあたります。その他、生命保険金(500万円×法定相続人の数まで)、死亡退職金(500万円×法定相続人の数まで)も非課税財産となります。

・葬式費用
葬式にかかった費用。

・基礎控除額
基礎控除額は下記計算式にて算出することができます。

 3,000万円+法定相続人の数×600万円=基礎控除額

 ※その他、税額控除が受けられる場合もあります。詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。

上記、相続税がかかるかどうかを確認する方法をお伝えいたしましたが、少し難しく感じられた方もいるでしょう。
「よくわからなかった…」という方にオススメなのが、国税庁の『相続税の申告要否の簡易判定シート』もしくは『相続税の申告要否判定コーナー』です。相続財産等を入力することで、相続税の申告の要否が確認できます。
また、「相続税の申告要否判定コーナー」では、実際に支払うべき相続税のシミュレーションも可能です。

実際に相続税が発生する場合、正確な相続税の算出、相続税の申告書の提出が必要となるわけですが、このあたりのことは、税理士に依頼するのがオススメです。特に土地を相続する場合は、自身で行なうのは至難の業でしょう。
※相続税の算出方法および申告書について詳しくは国税庁HPをご確認ください。

相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10ヶ月目の日までに提出する必要があります。なお、提出先は、被相続人の死亡時における住所地を所轄する税務署長です。また、納税の期限も、申告書の提出期限と同じです。期限を過ぎると、延滞税がかかる可能性がありますので、注意しましょう。
※相続税について詳しくは、国税庁HPにてご確認ください。

●固定資産税

不動産の相続後は、固定資産税を支払うことになります。

固定資産税の計算式は、「固定資産税評価額×標準税率1.4%=固定資産税」です。市区町村によっては、都市計画税0.3%以下が加算されることもあります。

固定資産税は、春頃に各市区町村より送付される納税通知書(納付書)にて支払うのが一般的です。市区町村によっては、手続きをすれば、銀行振替等に変更も可能です。詳しくは、各市区町村の担当窓口までお問合せください。

3. 押さえておきたい!不動産の相続に関する知識

不動産 相続ここでは、不動産相続に関する2つの知識をご紹介いたします。

3-1.不動産相続の先延ばしには、デメリットしかない

不動産の相続登記には、明確な期限等はありません。そのため、「面倒だし、しばらくはそのままにしておこう」と考える方もいらっしゃるのですが、不動産の相続は先延ばしにすればするほど、マイナス要因が増えていくばかり。良いことは一つもないので、未だ相続登記をしていない不動産がある場合には、早めに手続きを進めることをオススメいたします。

不動産の相続を先延ばしにするマイナス要因として、最たるものは、時間の経過とともに、「法定相続人が増え、複雑になっていく」ことでしょう。例えば、兄弟3人が不動産の法定相続人であっても、その3人が亡くなれば、その妻や子どもが法定相続人となります。こうしたことが繰り返されていくうちに、誰が相続人なのかが不明瞭となり、いざ相続をしようと思ったときには「法定相続人を特定するだけでも時間がかかる」「法定相続人のうち何人かと連絡がつかない」といったことになりかねません。

また、相続登記をしていなくても、固定資産税はかかるため、「誰が固定資産税を支払うのか」といった問題もあります。

やはり一番良いのは、相続が発生した時点で、相続登記をしてしまうことです。今、相続登記について検討されている方は、ぜひこのタイミングで手続きを完了させてください。

3-2. 不動産を「売却する場合」も一旦は相続をする必要がある

「相続した不動産をそのまま売却したい」と考えている方もいるでしょう。相続した不動産を売却する場合も、一旦は相続登記が必要となります。相続登記をせずに売却することはできないということは、ぜひ頭に入れておいてください。

[参考]相続した不動産を売却した時にかかる税金
不動産を売却すると、いくつかの税金がかかる可能性があります。

具体的には、【売買契約前後】にかかる可能性のある税金は、「印紙税」「登録免許税」「消費税」の3つ、【不動産売却後】にかかる可能性のある税金は、「住民税」「所得税」「復興特別所得税」の3つです。

[不動産を売却したときにかかる可能性のある税金まとめ]

 売買契約前後にかかる税金

印紙税

登録免許税

消費税

不動産売却後にかかる税金

住民税

所得税

復興特別所得税

※相続した不動産を売却する際には、税金控除が受けられる場合があります。詳しくは国税庁HPにてご確認ください。

▼不動産売却時にかかる税金について詳しくは、こちらの記事を参照ください。
【徹底解説!】不動産を売却した時に、税金はいくらかかる?

4. まとめ

不動産相続の流れを全5ステップでご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。

不動産の相続は、まず遺言書の有無を確認することからはじめましょう。遺言書がある場合は、基本的に、遺言書にしたがって相続人が決まり、相続登記をする流れとなります。一方で、遺言書がない場合は、遺産分割協議をしたうえで、相続人を決定し、相続登記をします。ぜひご紹介した5つのステップを参考に、「いつ・何をする必要があるのか」を掴んでください。その上で、細かい手続き等は、司法書士に依頼するのがオススメです。

また、あわせて不動産相続にかかる費用や税金なども押さえておくと、不動産の相続がよりスムーズとなるはずです。

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