
「地価公示って何?何に使われるの?」
「地価公示を調べたいが、具体的にどうやって調べるの?」
地価公示(公示地価ともいう)は公示地価法に基づいて、国土交通省が毎年1月1日時点の1平方メートル当たりの土地の価格を同年の3月に公表しているものです。
該当する土地に建物が建っていても更地としての価値を推定して評価するもので、公表される地価は、土地の売買や資産評価を行う場合に適正な価格を判断するための客観的な指標となったり、不動産市況の動向を知るためのひとつの基準値として使われています。
そこでこの記事では、知っておきたい地価公示価格に関する基礎知識から、詳しい地価公示価格の調べ方をご紹介します。地価公示を知ることで何がわかるのか、どう活用したらいいのかとともに、地価公示価格を参考にする場合の注意点もご紹介します。
最新の地価公示から不動産売却のタイミングも予測していますので、近いうちに売却を考えている方はぜひ参考にしていただき、実際に地価公示を調べてみてください。
*すぐに地価公示を調べたい方は2章からお読みください。
目次
1. 地価公示とは?地価公示に関する基礎知識
冒頭でも少し触れましたが、地価公示とは、地価公示法(昭和44年法律第49号)に基づいて、国土交通省が毎年1回、3月に公示する標準地の価格を指します。
ここでは、地価公示の特徴と役割、公示する目的をご紹介し、地価公示と似た名称の「地価調査」との違いについてもご紹介します。
1-1. 地価公示の特徴と役割
まず、地価公示の特徴と役割です。
◯地価公示の特徴
・毎年1月1日を基準日とする
・複数の不動産鑑定士が調査し、土地鑑定委員会が審査をしたうえで決定、公表する
・全国の選定された「標準地」と呼ばれる地点(平成31年地価公示では26,000地点)を調査する
・1平米当たりの単価で表示される
・(建物が建てられていても)更地としての価格である
・正常価格※である
・公示の際には、「住宅地」「商業地」「宅地見込地」「準工業地」「工業地」「市街化調整区域内宅地」「市街化調整区域内林地」に分類される
・地価公示価格の動向は、毎年、同地点の価格の変動率で示される
※正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
◯地価公示の役割
・公共事業の用地はこの価格を基準に決める
・固定資産税評価や相続税評価の基準にも使われる
不動産売却を考えている方で地価公示価格を売却の際に参考にしようと思っている方は、公示地価は「1月1日時点の価格である」ということ、「建物が建っていても更地としての価格である」ということにご留意ください。くわしくは1-4.で解説します。
1-2. 地価公示の目的
地価を公示する目的はいくつかありますが、主な目的は「一般の土地の取引価格に対して指標を与えて適正な地価の形成に役立てること」とされています。
土地は固有性・個別性が強く、形状や性質がひとつとして同じものがないので、A地点の土地の価格をそのままB地点の価格とすることはできません。また、土地の売買に関する情報は守秘義務等の問題もあって、開示されないケースも多く、非常にわかりにくくなっています。
通常であれば高く売れる土地であっても、事情があって早急に売らなくてはいけなくなれば、かなり安い価格で売られてしまいますし、逆にどうしてもその土地を手に入れたいがために通常よりも高い価格で購入してしまうケースがあるなど、売買の場では多種多様なケースがあって、時期やタイミングによって土地の適正価格というのは大きく変化してしまうという事情もあります。
このように、わかりづらい土地の価格に対して、ひとつの基準となる指標を与えるために公表されているのが地価公示価格です。
1-3. 地価公示と地価調査(基準地価)との違い
地価公示によく似た「地価調査」というものもあります。地価調査は、国土利用計画法施行令第9条の規定に基づき、毎年7月1日を基準日として、土地(基準地)の標準価格を調査し、各都道府県が毎年9月下旬ごろに公表しているものです。地価調査で公表されている土地の価格は基準地価と呼ばれます。
地価公示と地価調査の違いをまとめました。
|
地価公示 |
地価調査(基準地価) |
基準日 |
毎年1月1日 |
毎年7月1日 |
発表 |
毎年3月下旬ごろ |
毎年9月下旬ごろ |
決定機関 |
国土交通省 |
都道府県 |
調査方法 |
複数の不動産鑑定士 |
1名以上の不動産鑑定士 |
調査地点(平成30年) |
26,000地点 |
21,578地点 |
調査対象範囲 |
都市計画法で規定する |
都市計画区域外も含んだ全国 |
公示地価と基準地価の違いの中で最も大きく異なっているのは調査対象範囲です。公示地価は原則として都市計画法で規定する「都市計画区域」を対象としていますが、地価調査は都市計画区域外も対象とし、宅地ではない「林地」も含まれています。
そのため、同じ「全国平均」でも公示地価は都市部の平均値であると言え、地価調査の基準地価は「町村部も含んだ全国の平均値」であると言えます。
全国に1,700地点近く存在する地価公示と地価調査の共通の調査地点であれば、毎年1月1日時点の「公示地価」と7月1日時点の「基準地価」を比較することによって、おおよそ半年ごとの土地の値動きを知ることができます。
1-4. 地価公示を知ることで相場感を得ることができる
地価公示を知ることで、不動産物件を売却した場合の相場感を得ることができます。ただし、地価公示価格は、1-1.でご紹介した通り、更地としての価格であり、建物が建っていた場合であっても建物の価格は考慮されていません。また、1月1日時点の価格なので、売却したい時期には価格が変動していることも考えられます。
地価公示価格を調べることにより、相場感を得ることは可能ですが、あくまでも、ひとつの目安の価格として考えるようにしてください。
2. 最新の地価公示価格の調べ方2つと2019年の最新動
実際に、2019年3月に公表された、地価公示価格を調べてみます。調べ方には2種類あります。
①国土交通省「標準地・基準地検索システム」
②「全国地価マップ」
この2つのサイトを使った地価公示の調べ方を具体的に紹介していきます。
また、2019年3月に発表された最新の地価公示の動向についてもご紹介します。
2-1. 国土交通省「標準地・基準地検索システム」で調べる方法
まず、下記のサイトにアクセスしてください。
いろいろな検索の仕方が選べますが、ここでは、調べたい土地は1ヶ所のみの場合をご紹介します。
①検索地域指定(地名入力)をクリックします。
②次の画面で調べたい土地の住所を入力して、「決定」をクリックします。
③次の画面が検索条件指定画面となりますので、「地価公示・都道府県地価調査の両方」と「最新調査年のみ」にチェックを入れます。他の項目は記入せずに「検索」をクリックします。
*住宅地のみ調べたいという場合には、「用途区分」の「住宅地」にチェックを入れてください。
④地価公示が表示されますので、自分の調べたい土地に近い地価公示をチェックしてください。
2-2. 「全国地価マップ」で調べる方法
まず、下記のサイトにアクセスしてください。
①右端の「地価公示・地価調査」をクリックします。
*次の画面で留意事項の確認画面が出てきますが、「同意する」をクリックして次に進みます。
②3種類の土地を探す方法がありますので、選んで次の画面に進んでください。
③地図画面が出てきますので、画面を移動したり、拡大・縮小をして、標準値(地価公示地点)を探してクリックしてください。
*公示価格地点は黒い四角い枠で表示されています。
④選択した地価公示地点の情報は、左サイドに表示されます。
上図の場合、住所は「東京都港区赤坂1-14-11」で、土地価格(円/平米)は「4,340,000」です。その他詳細情報として、「法規制」や「利用区分・構造」(建物)、「建ぺい率・容積率」なども知ることが可能です。
2-3. 【参考】2019年・地価公示の最新動向
2019年3月に発表された最新の地価公示の動向をご紹介します。
「平成31年地価公示結果の概要」から、全国平均と首都圏、三大都市圏、地方圏それぞれの動向の概要と住宅地の動向についてご紹介します。次に、公示価格高順位表(全国)住宅地のトップ10をご紹介します。
2-3-1. 平成31年 地価公示結果の概要
◎平成30年1月以降の1年間の地価について
○全国平均では、全用途平均が4年連続の上昇となり、上昇幅も3年連続で拡大し上昇基調を強めている。用途別では、住宅地は2年連続、商業地は4年連続、工業地は3年連続の上昇となり、それぞれ上昇基調を強めている。
○三大都市圏をみると、全用途平均・住宅地・商業地・工業地のいずれについても、各圏域で上昇が継続し、上昇基調を強めている。
○地方圏をみると、全用途平均・住宅地が平成4年以来27年ぶりに上昇に転じた。
【住宅地】
◆雇用・所得環境の改善が続く中、低金利環境の継続や住宅取得支援施策等による需要の下支え効果もあって、交通利便性や住環境の優れた地域を中心に需要が堅調である。全国的に住宅地の地価の回復が進展し、全国の平均変動率は0.6%と2年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。
◆圏域別にみると、
・東京圏の平均変動率は 1.3%と6年連続の上昇となり、上昇幅も4年連続で拡大している。
・大阪圏の平均変動率は 0.3%と2年連続の上昇となり、上昇幅も昨年より拡大している。
・名古屋圏の平均変動率は 1.2%と6年連続の上昇となり、上昇幅も2年連続で拡大している。
・地方圏の平均変動率は 0.2%と平成4年以来27年ぶりに下落から上昇に転じた。地方圏のうち、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の平均変動率は 4.4%と6年連続の上昇となり、上昇幅も5年連続で拡大し、三大都市圏平均を大きく上回っている。地方四市を除くその他の地域の平均変動率は▲0.2%と下落幅の縮小傾向が継続している。
首都圏のみならず、大阪圏、名古屋圏においても変動率は上昇傾向が続いており、地方圏も変動率は上昇に転じているということで、日本国内全体で土地の価格は上昇傾向を維持していると見てよいでしょう。
2-3-2. 平成31年 公示価格高順位表(全国)住宅地のトップ10
下表は、平成31年1月1日時点の日本国内の地価公示(住宅地)のトップ10ランキングです。
順位 |
標準地の所在地 |
平成30年公示価格 |
平成31年公示価格 |
変動率 |
1 |
東京都港区赤坂1丁目1424番1 |
4,010,000 |
4,340,000 |
8.2 |
2 |
東京都千代田区六番町6番1外 |
3,850,000 |
3,930,000 |
2.1 |
3 |
東京都港区白金台3丁目55番4外 |
3,360,000 |
3,560,000 |
6.0 |
4 |
東京都港区南麻布4丁目12番1 |
– |
3,230,000 |
– |
5 |
東京都千代田区三番町6番25 |
2,970,000 |
3,050,000 |
2.7 |
6 |
東京都港区南麻布1丁目35番1外 |
2,810,000 |
2,990,000 |
6.4 |
7 |
東京都千代田区一番町16番3 |
2,900,000 |
2,960,000 |
2.1 |
8 |
東京都千代田区九段北2丁目6番26 |
2,800,000 |
2,870,000 |
2.5 |
9 |
東京都港区赤坂6丁目1911番 |
2,410,000 |
2,570,000 |
6.6 |
10 |
東京都千代田区平河町2丁目2番23 |
2,460,000 |
2,540,000 |
3.3 |
出典:国土交通省 平成31年地価公示 公示価格高順位表(全国)
10位以内すべてが、日本国内の不動産価格を牽引していると言われている東京都心3区(港・千代田・中央区)の地点となっているのがわかります。
3. 地価公示を参考にする際の注意点
不動産売却時、地価公示は、実際に取引される価格である「実勢価格」の参考にされることがありますが、注意しておきたいことがいくつかあります。
特に、地価公示がそのまま実勢価格となるわけではないことにご注意ください。
3-1. 地価公示は調べたい土地の近くにあるとは限らない
地価公示の発表地点(標準地)は、全国で2万ヶ所以上ありますが、調べたい土地のすぐ近くにあるとは限らないので注意が必要です。
標準地が比較的たくさんあるのは、東京都のような人口が集中している地域や駅に近い住宅地などで、郊外の標準地はかなり少ない傾向があります。
また、調べたい土地のすぐ近くに標準地があったとしても、さまざまな条件が異なってしまうと土地の価格は変わってきます。あくまでも、地価公示は目安として使うものです。
3-2. 実勢相場は地価公示を上回ることもある(下回ることもある)
実勢相場は地価公示を上回ることもあり、下回ることもあります。地価公示は、あくまでも適正な取引の指標とするために公表されているもので、地価公示価格と同じ価格や近い価格で必ず取引をしなくてはいけないという決まりはないからです。
不動産の実際の取引価格(実勢価格ともいう)は、その土地の需要によって決まってきます。その土地が欲しい人と望む人が多ければ、実際の取引価格は地価公示より高額になっていくでしょう。反対に購入者がなかなか見つからないような土地の場合は、実勢価格は低くなります。
例として「東京都心や経済の中心となっている地方都市、駅前の商業地や人気住宅地」は地価公示よりも実勢価格が高くなりやすく、「駅から遠い、交通が不便、高齢化・過疎化している地域」の場合は低くなる傾向があります。
地価公示は相場感を得るために参考にするひとつの指標として捉えてください。
3-3. 発表までのタイムラグを考慮する
1章で地価公示の特徴をご紹介しましたが、地価公示は1月1日時点の地価であり、発表は3月下旬に行われます。
調査した時期と発表の時期には約3ヶ月のタイムラグができますので、この間に経済情勢が変動したり、地域経済に影響を与える要因の変化によって需給動向にも変化があったとしても、反映がされていない数値であることにご注意ください。
4. 最新の地価公示価格から読み取る不動産売却のタイミング
2019年3月に発表された最新の地価公示から、不動産売却のタイミングは今が最適であると言えるでしょう。「2-3.【参考】2019年の最新動向」でご紹介した通り、地価公示価格は上昇傾向を維持しているからです。
一般的な傾向ですが、地価が上昇傾向にある時期は、不動産の価格も地価に連動して上昇していくので、買い手は高くならないうちに購入してしまいたいと考えて、条件のよい物件が見つかればすぐに購入します。よって、売主にとっては非常に売りやすい時期と言えます。
いっぽうで、地価が下落傾向にある場合は不動産の価格も連動して下降傾向になります。利便性のよいエリアであれば買い手がつきやすいですが、交通アクセスのよくない地方や過疎エリアの場合は、売れ残ってしまう可能性が高くなります。そのため、売りにくい時期と言えるでしょう。
地価公示はあくまでも、相場感を得るものです。不動産売却を決断したなら、一括査定サイトを利用してスピーディーに売却活動をスタートさてください。
不動産を一括で査定したい方におすすめ
不動産の一括査定について知りたい方におすすめ
まとめ
いかがでしたか。
地価公示を公表する目的は、一般の土地の取引価格に対して指標を与えて適正な地価の形成に役立てることとされていますので、相場価格を得るために使うことができます。
国土交通省「標準地・基準地検索システム」と「全国地価マップ」を使って調べることができ、どちらもインターネット上で、調べたい土地の近くの調査地点の地価公示価格を簡単に知ることができます。
不動産の実際の取引価格(実勢価格ともいう)は、その土地の需要によって決まるため、地価公示価格はあくまでも目安に過ぎません。
売却や購入を希望される土地など、地価が気になる土地がありましたら、ぜひご紹介した方法で最新の地価公示価格を実際に調べてみてください。